2021/05/30 23:00

革の個性と魅力を知る。世界にたったひとつのレザーを楽しもう。

動物から採れた天然の皮革は、そのどれもが一点もの。たとえ同じアイテムでも、革の質感や色合い、手触りは微妙に異なり、使い方や時間経過によっても風合いが変わっていきます。その個性を魅力ととらえて愛を注ぐと、革との暮らしがより一層楽しくなりますよ。多くの人々を魅了し続ける、天然皮革の5つの魅力に迫ります。

1. 革の表情を豊かに演出する「色ムラ」

同じ1枚の革でも、部位によって繊維の密度や厚さが違うために、染めムラが出ることがあります。革質は動物の年齢や雌雄、生活環境、品種、個体、身体の部位など、あらゆる条件で異なっています。また、同じ牛の同じ部位にある狭い面積の革でも、肌理の細かさによって斑紋のようにムラができることがあります。染めの工程で、2つとして同じ染め具合の革は存在しません。オンリーワンのムラが革の表情を豊かに演出してくれます。


革の発色は、使っているあいだにも日々変化していきます。深みや渋みがでてきたり、より艶やかな印象になったりと、時間の経過とともに育っていく魅力でもあるのです。自分だけのカラーに染めていく過程を楽しむことは、革を身に着ける醍醐味です。

2. 革の豊かな表情をつくる「シボ(皺・萎)」

革の表面にある細かく凸凹したシワ模様を「シボ」といいます。革の表情をつくる大きな個性のひとつで、革独特の風合いや優しい雰囲気を生み出します。

シボ(皺・萎)

牛の革には筋肉質なところもあれば脂肪が多いところもあるため、シボの大きさや密度も部位によって異なります。筋肉質なお尻の部分はシボが少なく、動かす機会が多い肩や脂肪が多いお腹はシボが多めです。個体によっても部位によってもシワの模様は異なるため、ひとつとして同じシボはありません。世界にひとつだけの「シボ」を眺めたり触ったりして、楽しんでみてください。

3. 天然皮革の証「血筋」

血筋

革の銀面(表面)にみえる牛の血管の跡を「血筋」といいます。天然の革=本革だからこそあらわれる特徴です。ヌメ革のように加工の少ない革では、血筋が葉っぱの模様のようにはっきりとわかります。

血筋は加工の過程で目立たないようにすることもありますが、革の自然な表情としてそのまま生かす場合もあります。本物の天然皮革の証として、じっくり味わってみてはいかがでしょうか。

4. 革愛好家が親しむ「トラ」

トラ

動物の革には多数のシワやたるみがあります。それらを伸ばして染色したときにできるシマ模様の染めムラや筋を「トラ」と呼びます。動物の虎の体の模様に似ていることから名付けられました。

トラは牛の肩から採った革によくみられます。肩は頻繁に動かす部位で、皮膚が伸縮する機会も多いためです。本物の革だからこそ楽しめる、革好きにはたまらない魅力のひとつです。

5. 野生の刻印「バラ傷」

牛の皮膚の傷跡が革の表面に残ったものが「バラ傷」。牛同士がケンカをしたり、体を引っ掻いたりしたときにできる傷は、革のワイルドな一面であり、人工皮革には決してあらわれない特徴です。


個体によって性格や過ごした場所が異なるため、バラ傷は形も大きさもさまざま。革全体に存在するため、完全に取り除くのは困難です。目立たないようにしつつも、革の個性として味わえるように加工します。野生ならではの趣に溢れた特徴として観察してみると、きっと愛着がわいてくることでしょう。


本革の魅力は、一つひとつに豊かな表情があり、使い手によってさらに個性が磨かれること。今あなたが手にしている革の鞄や財布も、あなただけの、世界にひとつのアイテムです。たくさん眺めて、たくさん触れて、革と過ごす時間をかけがえのないものにしていただけたらうれしいです。